「福島の農家さんとつくるワイナリー」ふくしま逢瀬ワイナリー勝俣さん

こちらは1月18日に渋谷で行われる「郡山ナイト〜郡山の企業との関わり方を考えよう〜」の記事となります。イベント特設ページはこちら

震災を機につくられたワイナリー、ふくしま逢瀬ワイナリー。
福島の農家さんと協力して新たにワインを製造しようとしています。
ワイン専用のブドウ苗を植えてからちょうど3年、今年度から本格的にワイン造りがはじまります。
協力者をさがしているとのことで、お話を聞いてきました。

―― 事業のご説明を頂けますか?

ふくしま逢瀬ワイナリーさんのポットスティル

ブランデーを蒸留するポットスティル

ワイナリーの運営をしています。「農家の方と一緒に作るワイナリー」というのが大きな特徴です。東日本大震災が起きてから、復興支援の活動をずっと続けてきましたが、震災から3年が過ぎたあたりで、被災された方への支援だけでなく、自分達でも何か事業を起こそうという話になりました。岩手や宮城に比べると、福島で私たちがサポートできたことが少なかったということもあり、福島で何かやりたいなと考えたんです。福島は農業が盛んだということは知っていたので、農家の皆さんと何か一緒に出来ないかなということから、私たちのワイナリー構想がスタートしました。

農家の方を紹介していただいて、いろいろと話を聞いて回りました。はじめからワイナリーと決めていたわけではく、ヒアリングを始めた当初は、風評被害への対策として「植物工場を作ったら良いのでは?」などと考え、農家の方々のニーズを確認していました。でも、今ひとつ反応が良くなかったんです。そこで、聞き方を少しずつ変えていって、「どういうことやったら楽しいですか?」とか、「本当はどういうことやってみたかったですか?」とか、そういう聞き方をしていったら、”自分たちの作ったものを加工して販売する”というところで何かできたら面白いよねっていうお声を聞くようになりました。

最終的に「ワイナリー」という事業に行き着いたのは、人参ジュースを販売しているある農家さんの話がきっかけでした。郡山でつくられた人参を、別の県まで運んでジュースに加工してもらっているという話を伺う中で、やっぱりその土地で作ったものをその土地で加工できるっていうのはいいな、という声が頭に残ったんです。そこで、福島の農家さんの作ったものを、福島で加工・販売する“何か”をつくろうという発想が生まれました。

その後もヒアリングを続ける中で、福島はおいしい果物をたくさん作っていて、フルーツ王国と呼ばれていることを知りました。調べてみると、モモ・ナシ・リンゴは、いずれも全国でもトップクラスの生産量ということもあり、じゃあ果物を加工しようということになりました。そこで、最終的にワイナリーというところに行き着いたんです。なので、「農家の方と一緒に作るワイナリー」なんです。

ふくしま逢瀬ワイナリーさんのりんごのシードル

ふくしま逢瀬ワイナリーさんが製造しているりんごのシードル

ワイナリーというと、もちろんブドウでつくるワインが主役なのですが、そのような経緯もあり、私たちのワイナリーでは、ブドウに加え、福島産のモモ・ナシ・リンゴをつかったお酒もつくっています。福島で育てられた果物の魅力を発信したいという想いがベースとなっているんです。

それと、このワイナリーは郡山市だけのプロジェクトだとは思っていないんです。リンゴは福島市、モモは伊達市からも調達していますので、“オール福島”のプロジェクトとして、福島の真ん中にある郡山にワイナリーを建てることになりました。

また、新しい挑戦として、福島県ではワイン用のブドウを育てている農家さんがほとんどいなかったので、今は生産者さんにお願いしてワイン用のブドウを育てていただいています。

―― 将来的には地元の人たちにワイナリーの運営を任せるのが最終目標なんですか?

勝俣麻理さん

はい、このプロジェクトの最終目標はこのワイナリーを地元企業として自走させていくという事なんです。企画段階から事業が軌道に乗るまでの立ち上げフェーズは私たちが中心となって運営していますが、将来的には、復興支援という立場の我々ではなく、本当にここでやっていきたいという人たちでこの事業を回していくようにしたいんです。
これは本当にこのプロジェクトの大きな目標です。

―― もしかすると今回参加してくれた人にやりたいって方がいるかもしれないですよね。

そうですね、将来的には事業を地元に引き継ぎたいと言いましたが、必ずしも地元出身者だけでなくても良いと思っています。県内出身の人と東京などから移住してくる人がミックスされることで、色々な新しいことが生まれる気がしているので。そういうきっかけになるといいなと思っています。

―― 渋谷の人とか東京の人達が参加して新しい事業をつくるのに、何か新規事業とか新商品の開発の可能性はありますか?

貯蔵樽

私たちのワイナリーはまだまだ始まったばかりなので、やるべきことはたくさんあります。商品のラインナップも、まだ固まっているわけではありませんし、新しい商品やイベントの企画、地元の観光施設や自治体・大学との連携など、何か一緒に開発できたら面白いなと思っています。うちはワインだけでなく、リキュール、ブランデーと3つのお酒の製造免許を持っているんですね。ワインはブドウから作るので、ある程度イメージが確立されていますが、リキュールやブランデーって本当に幅広いのでなかなか難しいんです。
 
リキュールってどうやって飲みますかっていうと、なかなか家では…となりますよね。シードルだとそのまま飲むからいいんですけど、このリキュールは度数が20度前後と比較的高いものなので、自分でお好みの飲み方をしていただくことができます。ここに来てくれた方には直接そういう話が出来るからいいんですけど、日常的な食文化として浸透していくには、時間が掛かるなと思っています。少しずつでもリキュールやブランデーのファンを増やしていきたいですし、今後はフルーツのブランデーも出したいと思っています。

あとはそういうブームを作るイベントというか、フルーツブランデーブームみたいなものを仕掛けていくとか、そういうことをやりたいんです。でも、先ほど言ったように7人くらいで全部を回さなくちゃいけないので、なかなか時間がとれないんです。なので、アイデア出しとか一緒にやってくれる人がいると非常に助かるなっていうのは思います。

―― 今このワイナリーの中でこういうところを埋めてくれたらいいなとか、こういうことをやってほしいという企業側からの要望はありますか?

勝俣麻理さん

本当にまだまだ駆け出しのワイナリーなので、どこを手伝って頂いてもありがたいのですが、やっぱり企画とか、商品開発ですかね。商品を作って売るだけではなかなか浸透していかないので、ファン拡大につながるような仕組みを作ってくれる人がいるといいなと思っています。そのあたりのことは、やらなければならないことが山積みです。

自分の身の回りでも知らない人いるんですよ、このワイナリー作ったこと(笑)。そういう感じなので、もっと広くファンを作るというか、そういう仕組みや企画っていうんですかね、そういう動きをしてくれる人がいたらすごく有難いです。情報発信して、まずは逢瀬ワイナリーのことを知ってもらい、そこから継続的なファンになってもらうためのイベントがあったりして、このワイナリーと人々とのつながりを作る橋渡しになってくれる人がいると、非常にありがたいなと思います。

―― 郡山以外の地域に対してふくしま逢瀬ワイナリーがありますよというPRイベントなどはやられているんですか?

年に何回か、イベントなどに出展させて頂く機会はあるのですが、まだまだ全然できていない状況です。本当はもっとそういうことがしたくて、さらに言うと、こんなにおいしい果物を作っている農家さんがいるからこそ、こんなにおいしいお酒ができるんだよという流れで、福島の農家さんたちのことも紹介したいんです。多分紹介するとファンになってくれると思うんですよね。これから県内で生産されるブドウが増えてくると、農作業の人手も足りなくなってくると思うので、ファンの方々に収穫を手伝って頂くなど、ワイナリーとファンが直接繋がるような形を作って行きたいと思っています。

―― 例えば東京の人で東京にいて広める活動をやりますとかっていう事でもアリなんですか?

うん、アリです。そういったのでも嬉しいです。

―― 逆にこれが自慢とかっていう事はありますか?

ふくしま逢瀬ワイナリーさん

ふくしま逢瀬ワイナリーさんに併設されたショップ

そうですね…。まだできたばかりなので、ワイナリーの立ち上げの時期に関われるってなかなかない経験だと思います。まだまだ歩き始めたばかりなので、どうにでも染めることができるというか、色々なアイデアを吸収したいし、新しいことをやっていきたいので、何か面白いことを考えてくれたことを形にしやすいというか。こうやりますっていうのが固まっているステージにまだいないので、色々仕掛けられるっていうのが、まだ立ち上げ期だからこそできることなのかなと思います。

―― どういう人と一緒にやっていきたいという思いはありますか?

このワイナリーは農家の人と立ち上げたので、農家の人の作ってる果物とか農家さんを理解してくださって、好きになってくれて、福島の果物の魅力をわかってくれて、それを広めたいという思いを持ってくれるといいなというのは思います。

―― 果物であったりその生産者さんであったりが好き、だから広めたいっていう気持ちが重要ということですか?

ふくしま逢瀬ワイナリーさん

ふくしま逢瀬ワイナリーさんの外観

そうです!ここのコンセプトというか思いを広めたいです。農家の人と一緒にやるというのが始まったキッカケで、これは他のワイナリーとはちょっと違うので、そこのコンセプトを理解してくれて動いてくれる人がいいなと思います。

―― お酒を造るためにじゃなくて、農家さんを広めたいからお酒を造っている側面が強いんですね。

そうです。福島県のおいしい果物の魅力を発信したいから作ったワイナリーで、当然おいしい果物を発信するためには農家の人もいいものを作ってくれないとダメだし、私たちもその果物を原料に、皆さんにおいしいと言って頂けるお酒を造らないとその魅力は繋がらないですよね。農家の皆さんとワイナリーの二人三脚で福島県の果物の魅力を発信していきたいので、そのコンセプトに共感してくれるといいなと思います。

―― 確かにちょっと普通のワイナリーとスタンスが違いますね、前提が福島の果物のおいしさを広く知ってもらうということなので。

ワインは果物の味でそのワインの味が決まるので、いいと思うんですよね。農家さんの作った果物の良さがそのまま出てくるので。農家さんの方がいいものを作っているという点においては、他のワイナリーにも負けないところだと思っています。

―― 他社との新しい連携にはどのようなイメージをもたれていますか?今は自分たちの土台の部分を作っているフェーズですか?

そうですね、土台をつくっているステージですけど、さっき言ったブランデーとかリキュールっていうのは一緒に開発したいっていうそういう企業とかそういう人がいたら嬉しいです。
今後、ブドウの生産量が増えていってワインが出てきますけど、やっぱりモモ・ナシ・リンゴのお酒も造っているのが私たちのワイナリーの特徴でもあるので、ブランデーやリキュールにも力を入れていきたいです。そこを何か一緒に企画したいという方がいれば、すごく面白いと思います。

2019年1月18日に渋谷で開催される、郡山ナイト〜郡山の企業との関わり方を考えよう〜にて郡山との関わりを地元企業を介して関わる方法を考えるイベントを開催します。
逢瀬ワイナリーの勝俣さんも参加されるので、ご興味のある方はお気軽に参加ください。
イベント特設ページはこちら