「個の感性を育てる空間」を蔵場さんとつくろう

こちらは11月30日に渋谷で行われる「郡山ナイト〜郡山の企業と一緒に事業をつくろう〜」の記事となります。イベント特設ページはこちら

明治27年(1894年)に鉄砲火薬店として創業。現在、地方商社として建設資材を主に卸・小売業、そして関連する専門工事業を営む株式会社蔵場(くらば)さん。
同社を経営する代表取締役の菊池亮介社長には「郡山ナイト〜郡山の企業と一緒に事業をつくろう〜」に企業として参加していただきます。

そんな菊池さんは「個の感性を育てる空間」を作りたいと考えています。蔵場さんの事業やそのやりたいことへの想いをお聞きしてきました。

株式会社蔵場 代表取締役 菊池亮介さん

株式会社蔵場 代表取締役 菊池亮介さん

蔵場は、建設資材の販売と土木資材の販売が主要事業です。
そこに付随して、その資材を使った工事施工をやっています。
昔は、社名にも「銃砲火薬店」が使われていたように、主は銃砲や火薬がメインでした。
現在は、火薬部・建材部・工事部・商事部の4部門に分かれています。
詳しくはホームページを観て頂ければと。

株式会社蔵場 代表取締役 菊池亮介さん

弊社は、火薬部・建材部・工事部この3つが弊社の土台です。

地域に根差して事業を継続してきた代々の歴史があり、蔵場は「花火屋さんでしょ?」とか、「昔銃砲やってたんだよ」とか、「火薬屋さんでしょ?」ってイメージが強い。

震災前は建設業って非常に悪かったんですよ。どちらかというと、私はIT系にいましたが、11年ぐらい前に郡山に帰ってきてこの仕事に入りました。当時建設業は右肩下がりだったんです。「この先真っ暗」っていう状態に帰ってきて、「困ったな」と。えらいところに帰ってきたぞと、自分の中で思ったんですよね。

ただ発想を変えれば、「何でもチャレンジできる」なと。

私が入社した当初CS部という事業部がありましたが、専任の営業スタッフはおらず、震災以降、本格的に商事部という位置づけで事業を小さいながらもスタートし始めました。現在は、雑貨、節水システム、エタノール製剤、電解水生成装置など、幅広い魅力ある商材を取り揃えています。現在は、そこが新規事業をスタートアップする上での、部署になっています。

株式会社蔵場 代表取締役 菊池亮介さん

ーー おそらく、蔵場さんの事業の話をしたら皆さん火薬に一番食いつくと思うんですよね。

絶対そこにいくと思う(笑)
でも火薬からの発展性はたぶん無い。なぜなら、法律上いろんなものに縛られているから。
どちらかというと、これからの日本の超高齢化社会の基盤づくりに活用できる、火薬類の新技術を研究開発してもらいたいですよね。これは、私たちというより、製造メーカーが主となるかもしれませんが。

震災で萎縮した子どもたち。

ーー その他にも子供向けのワークショップなどもやられていますよね? 何かきっかけがあったんですか?

震災以降は子供達が外で遊べなかったんです。放射線の影響とかで「外危ないよ」とか「外ダメだよ」とか。子供は親の言動や行動に敏感だから、その雰囲気を感じ取り萎縮しちゃうんですよね。思いきって外で遊べないって環境が当然あったのは事実ですけど。当時、子どもたちの笑い顔や声が消えた時期がありました。

震災年の2011年夏に、社会貢献事業の一環として地域でなにができるかって考えました。弊社で玩具花火を取扱っていたので、近くの2つの幼稚園にお邪魔して、お泊まり保育の時期に併せて、「ボランティアで花火打ち上げに行きます」って言って小さな花火大会をやらせていただいたんですよ。子供の身長だと普通の玩具花火でも立派な花火大会になっちゃうので。

園庭で手作りでナイアガラや打ち上げ花火とか、いろんな吹き出しの花火をダンボールの上にガムテープで固定して、ガズバーナーで点火!

震災直後は、笑ったり大きな声を出せていなかった子どもたちが、「すごーい!」とか「ワー!」とか歓声が上がった時、動いて良かったなと心底思いました。子供たちの活気っていうのは、街の活気にもリンクしていくんだろうなって自分の中で気づきがあって。

子供達の笑顔っていうのが地域の宝であって、今後彼らが大きくになるにつれて、またこの郡山に戻ってきてもらえれば一番いいのかなって。
そして親子のために、子供達の感性を育てる空間づくりっていうことでワークショップを開催したりいろんなイベントに参加したり。その当時はワークショップを開催してる団体ってまずなかったんですよ。

震災後2012年に、郡山市内のある場所をお借りして、雑貨販売をしておりました。その際に、販売していたマスキングテープを壁に貼ってデコレーションしたのが始まりですね。店内にいた子どもたちに楽しんでもらおうと、一緒に壁にマステを貼りだしたら、子どもたちが最高の笑顔で作品を作り出していった。それがキッカケで、「masking tape de art project: ラクバリ」を、蔵場の地域貢献事業として2012年5月スタートさせました。
壁に落書きを文字って、楽しく貼るから「ラクバリ(楽貼り)」という造語をつくり、親子向けのワークショップが始まった形です。現在は「わたしじかん」というグループ名で活動しています。

昨今、誰でもワークショップを開催できる形になってきたので、うちがやるべきことはある程度、達成したかなという満足感に入っちゃって。
本当はこの次にやりたいこともあるんだけど、まだちょっとそこまで行けてない状況です。

気づきが得られる空間をつくりたい、そこからチャンスが生まれる

ーー 次のやりたいこととは具体的にどのようなことですか?

ワークショップって主催側が、人を集めるのが普通の形式。このワークショップをやり始めたそもそものコンセプトっていうのが、「個」の感性を育てる空間作りだったんです。1回だけワークショップなどをやることが本当に空間づくりしているのかという思いが自分の中にはずっとあって。

ワークショップというよりは、ものづくり。ものを作るのにそこに行けば素材があって買えて、自分達で作ることができるっていうスペースをつくりたいなと思ってる。団体の人たちがそこに集って初めて出来るのではなく、いつ誰がきてもモノづくりを提供できる場所。

カルチャースクールってあるじゃないですか、先生が準備してくれたものを使って作るでしょ。そうじゃなくて素材がそこにあって、「こういうのが必要ですよ」っていう中でいろんな種類の中から選べるようなモノづくりの場所があるかっていうと、あまりない。しかも毛糸の球をたくさんの量を使うんだったらいいよ。でも一つを丸々買っても無くならないじゃないですか。

ーー たしかに、もったいないですよね。

だけどそこに行けば作るために自分の好きなものを必要なぶんだけ買えるという形の方が面白いかなと。素材がそこにたくさんあって、素材カフェみたいな感じ(笑)

それに趣味で買うには「どう考えても高いでしょ」っていう機材あるじゃないですか。それで一回探したの「そんなとこないのかな?絶対あるだろ」と思って。そしたらあった渋谷の「FabCafe」。さすが都市圏!

そこには3Dのプリンターがあるんですよね。渋谷だったらクリエイティブな人たちいっぱいいるだろうけど、郡山に3Dプリンターかぁと思って(笑)必要な人いるのかな?

ーー さきほど、お話を聞いてきたデコ屋敷の橋本さん3Dプリンター欲しいって言ってましたよ。

いるんだ!(笑)
「モノづくり」というとすごい大命題になっちゃうけど、子供から大人までが何かちょっとしたワークショップだったり、「今日はこれやってこーよ」みたいな感じで自由に選べるような場所があってもいいのかな。

自分でやってみて、「今回はこのワークショップをやります!」「あれ、この前やったやつやらないんですか?」「この前これだったんですけど・・・」っていうやり取りって結構あったんですよね。

さっき言ったような形であれば常に素材があるので前と同じものを作ってもいいし、別なものを作ってもいい。自分が使いたい量を使いたいぶんだけ使えるし、その日によって使いたい色が使える。
皆やりたい方向は違うから、こっちが「これだけ」と制限してしまうよりは「そこに行けば色んなものがある」という方が楽しいかなって。それが本当の意味でも「個の感性を育てる空間づくり」なのかなと思ってます。今一番やりたいのはそれです。

株式会社蔵場 代表取締役 菊池亮介さん

自分の中では地域にある企業が地域社会へ貢献することはふつうの事だと思います。地域が賑やかにならないとその町は絶対に良くならない。地域というのは人で成り立ってる。子供から大人までがその地域の一員です。

BtoBで蔵場という会社が成り立ってる中で、最終形態的にはBtoRっていう部分まで行きたいなと思っていて。RはRegion(リージョン)つまり地域なんです。人も企業もその地域の中に当てはまりますよね。

通常の事業からもっと地域に落とし込んだ、地域を活性化させれるような事業にまで発展できればやってる方も楽しいし、地域の人達にもまたさらにプラスになるんじゃないのかなって思っているんです。

何かモノを作ることで創作意欲とか発見だったりっていうのがたくさん出てくるんですよね、それって僕らがこういう事業やってる上でもプラスになることってたくさんあると思うんですよ。

人にとって「気づき」ってすごく重要で、「小さい気づき」もあれば「大きな気づき」もあると思うんですけど、それを誰かから得られるっていう事っていうことがものすごく重要なことだと思うんです。

気づきを得られる場所があれば、チャンスは誰にでも巡ってくるし、成長することが楽しくなるんじゃないかな。この地域の暮らしを楽しくしたいし、やるんだったら誰もやってないようなことやりたい。
郡山市内という形じゃなくて、福島県内または県外からも色んな人たちに集まってもらえて、そこから色々なネットワークが繋がれば、新しい事業が生まれるチャンスになるのかなと思いますね。

ーー 今回のイベントで事業を新たに作られた場合、どういった関わりをしていきたいと考えていますか?

新しく事業やり出す時って当然人が必要だし、そこに関わる経費っていうのは常に必要にはりますよね。大きい企業さんって人がいるから動けるんだけど、小さい企業は新しいことに投資ってなかなかできない。それは結構ネックだったりするんですよ。
新しいことやりたいんだけど、そのための人材やモノに先行投資できるのかっていうと難しいんだよね。

それってどこも一緒だと思うんです。それはうちもジレンマで、元々の建設業とは全く別の事業を始めて伸ばせるかというと難しい。
そこを伸ばしていくには、「人を入れる」というより、他の事業資産や人とタッグを組んで、お互いがWIN-WINになるような形で事業を進めていくのが一番面白い方法なのかなって思っているんです。

今まではひとつの会社がM&Aなりで会社を吸収したり、部署を増やしてひとつの会社で全てできますって形だった。でもこれからはそうじゃなくて、共生するってのが必要なんじゃないかな。
それぞれが自由にできるというか、連携し合うことで一つ一つの歯車が独立した形で動き出せれば面白いかなと思います。

会社を作るって大変だし、会社の中で一緒にできるものであれば一緒にやった方がいいと思うんですよ。でも人によってはもっと別の可能性があるかもしれないじゃないですか。
今回のイベントでも「こうじゃなきゃいけない」というよりは、「こういうふうな形もありかもしれないよね」ってスタンスで取り組めたらいいですね。

2018年11月30日に渋谷で開催される、郡山ナイト〜郡山の企業と一緒に事業をつくろう〜にて新しい事業やプロダクトの形をつくるイベントを開催します。
株式会社蔵場の菊池さんも参加されます。ご興味のある方はお気軽に参加ください。
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