「世界に通用する次世代のシニアサービス」をアイデンティティーさんとつくろう

こちらは11月30日に渋谷で行われる「郡山ナイト〜郡山の企業と一緒に事業をつくろう〜」の記事となります。イベント特設ページはこちら

「女性の雇用と社会進出を応援したい」という思いのもと、2010年から家事代行サービスを福島県と宮城県で展開する株式会社アイデンティティー。これからの超高齢化社会に向けて、新年度から新たな民間の介護事業もスタートさせる予定です。

野地数正(のぢかずまさ)社長に「郡山ナイト〜郡山の企業と一緒に事業をつくろう〜」に企業として参加していただきます。

野地数正さん

女性スタッフ50人の人的資源が最大のリソース

ーー 家事代行サービス、働く女性にとって心強い応援団ですね。

郡山市、福島市、仙台市を中心に、8年間、家事代行サービスを続けてきて、おかげさまで認知度も上がってきましたし、スタッフも50名にまで増えました。しかも、スタッフは社長以外みんな女性です(笑)

「女性の雇用と社会進出を応援する」という理念のもとで起業しましたので、スタッフたちにもイキイキと働いてもらうことが大事だと考えています。

社名の「アイデンティティー」には、一人ひとりが「自分らしさ」を仕事を通して見つけてもらいたい、という想いが込められています。そのために、会社の目的、働く意義などは繰り返し伝え続けてきました。

お客様よりも社員を大切にするというのがうちの考え方です。顧客満足度とよく言われますが、従業員の満足度が80パーセントだったとしたら、お客様が100パーセント満足になることはないと思うんです。

うちの従業員は、育児真っ最中の人もいれば、子育てが一段落した人もいます。週に1回しかシフトを入れない人もいれば、週3~4回働く方もいます。年齢も34歳から74歳まで幅広く、スタッフそれぞれのライフステージに合わせて、働き方もシフトしてあげるように心がけています。おかげさまで長い期間勤め続けてくれる方が多いです。素晴らしいスタッフばかりです。

ーー 優秀なスタッフさんたちは御社にとって大切なリソースですね。

はい、まさしく。女性スタッフ50名がいて、この人的資源、人的ネットワークが最大のうちのリソースだと考えています。
起業前、私はずっと自動車業界にいたので、起業するときに家事代行をやるなんて想像もしていませんでした。プライベートでも家事なんてやったことなかったですから(笑)

でもどこかで、勘なんですけど、「定期的にお客様のご自宅にお伺いする」というビジネススタイルが、将来、いろんなビジネスモデルにジョイントしていくだろう、業態変化していくだろうと感じていたんです。

例えば、自動車の営業マンだったら、週に2回も3回も自宅を訪問したら嫌われますよね。でも、家事代行はお客様が喜んで家に迎え入れてくれて、家のことをいろいろとご相談いただきます。信頼関係があるからこそ、いろんなサービス展開が可能になるのだと思います。
これから産業構造が変化していって、家の中もスマートハウスといったIoTや利便性の高い家が出てきて、マンションも環境変化していますが、実際に住んでいる方がそれらのサービスを使いこなせるかといえば、そうでもないと思います。

どんどんIT化やAIが進んでいけばいくほど、人の手を介することの付加価値がすごく上がっていくのではないでしょうか。わが社の人的リソースという強みは、AIが進む社会の流れとは真逆かもしれません。でも、オートメーション化ではなく、人間にしかできない、しかもクオリティの高いサービスを提供するという付加価値はうちの強みになっていくのだと思います。

野地数正さん

リソースを活用して民間介護事業をスタート

ーー そのような人的リソースと訪問型のビジネススタイルを生かして、介護事業に乗り出すのですね。

実は2年前から介護業界に参入しました。8年前から、家事代行をやってきて、お客様から「介護はやらないの?」とよくお声がけをいただきました。「なんでうちに相談がくるのかな?」と思って、介護業界のことを少し研究してみたんです。2年くらいリサーチしたんですが、現在の介護保険制度は使い勝手が悪い部分がかなりあるんですよね。

例えば、留守宅には訪問できない、とか、草むしりもできない、料理もできない、指名制もない。たくさん利用したくても、要介護度で利用できる回数が決まっている、病院の前までは付き添いできるけれど、病院の自動ドアから中には入ることができない、など、様々な使いづらさがあって。1割負担だから仕方がないと言ってしまえばそうなのですが、国のルールにのっとって利用するしかない、というのが介護保険制度の現実なんです。

家事代行サービスは、首都圏では非常にニーズのあるビジネスモデルです。もちろん東北地方でもニーズはありますが、「お金を投じて時間を買い、そして別なことに自分のリソースを注入する」という感覚は、まだまだ東北ではなじんでいないように感じます。

でも、介護は違う。介護は日本全国共通で、待ったなしなのです。例えば、少しくらい家の掃除をしなくても命にはかかわりませんけど、親の介護となると待ったなしで、最悪の場合、介護離職するしかなくなってしまうんです。

ーー 民間の介護事業をスタートさせるということですか?

民間の介護事業は100パーセント自己負担ですので、安くはないです。人によっては1時間4000円以上になるケースもあります。
でも、ニーズはあるし、社会的意義は非常に大きいと思います。なぜなら、税金を一千円も使わないんですから。

社会保障費や医療費は、高齢者がどんどん増えていく時代の中で圧縮するのはなかなか有効な手立てはないんですよね。なので、ある程度お金に余裕のある方は民間の介護サービスにどんどん移行してもらい、国の介護保険は本当に必要としている人、どうしても利用しなければいけない人のためのセーフティーネットになっていくべきだと思っています。

グループホームやサービス付き高齢者住宅に毎月16万円も20万円も払う方はたくさんいらっしゃいます。でも、できれば余生はご自宅で過ごしたい方がほとんどです。それを現行のヘルパーさんだけでは対応しきれないですよね。自宅に訪問して介護支援するヘルパーさんの数は、今後、2030年に30万人、2050年には70万人が足りないというシミュレーションがあるんですよ。なので、民間の介護サービスが出てこないと、日本の介護制度は間違いなく崩壊しますよ。

実は、ヘルパーさんの仕事は身体介護と生活支援の2種類があるんですが、生活支援のほうは家事代行の内容とほぼ同じなんです。きちんと教育された、クオリティの高いスキルを持った女性スタッフたちの人的ネットワークというリソースを活用し、介護事業に参入します。ヘルパーの資格を持っている人については今の制度よりもいい給与体系にして人材を確保したいと考えています。

ケアという概念をもっと広義にとらえれば可能性は広がる

ーー 新規事業のローンチが楽しみですね。どんな領域の方と協業したいと考えていますか?

ありがとうございます。サービス名を「フリーケア」と名付け、商標も申請中です。
介護の考え方が柱となりますが、たぶんいろんなサービスに派生していくだろうなと考えています。

例えば、旅行。どんなにお金があっても身体が不自由な人は年に何度も海外旅行には行けないですよね。家族に迷惑をかけてしまうから気を遣うし。そんな身体が不自由な方のための海外旅行のお手伝いに特化したサービスがあってもいいなと考えています。きちんとした介護の知識を持った人が旅行のアテンドをしてくれたら、頼むほうもちゃんとしたサービスとしてわがままも言えますし、家族よりも知識を持っていて、海外旅行のトレーニングを受けていれば、なおのこと心強いですよね。

ケアという概念が「介護」だけではなくて、もっと広義にとらえれば、いろんなことができると思うんです。
2007年以降に生まれた子どもたちの時代はみんな平均寿命が100歳以上になるといわれています。そんな時代に、60歳、70歳以降の残り30年を、どう生きていくかというときに、ちょっとしたケアがあれば、誰もがエンターテインメントに出かけたり、食事に行ったり、人に会ったり、少しずつ活動範囲が広がっていくと思うんですよね。

また、インバウンドにも使えると思っています。海外からいらっしゃる身体が不自由な方々の旅行をサポートするサービスもニーズはあるんじゃないかな。
日本は先進国の中でも先駆けて高齢化を突き進んでいて、ものすごく大変な道を通っていくと思うんですが、その経験を海外にも生かしていけるような、日本の文化をサービスに変えていきたいですね。

野地数正さん

ーー 実際に誰かと協業する場合、どのような点を重視していますか?

やはり、社会課題を解決する、という考え方を生業の基本にしている人、つまり社会起業家とぜひ組みたいですね。それを応援してくれるアクセラレーター的なチーム体制もあるといいな、と思いますね。

「訪問~」というサービスも増えてきていますので、例えば理美容の方とジョイントベンチャーなんかは親和性が高いと思いますね。
次世代のシニアサービスを日本から発信するというのが、意味は大きいと思うんです。

超超高齢化が進み、人口減少も甚だしく、こんなに危機を迎える国はほかにないと思います。そんな時代に向けて、子どもや孫たちに残していくかと考えたときに、いろんな選択肢はありますが、私は、日本に行けば質の高いシニアサービスが受けられるということを一つの強みにしていきたいなと思っています。そのために、シニアの研究をしていきたい。若手ベンチャーの人たちはなかなかシニア向けサービスには目が向かないかもしれませんが…。

今の日本では、65歳以上が高齢者と定義づけられていますが、高齢者といっても幅広いし、ひとくくりにしてしまうとマーケティングできないと思うんです。シニアビジネスをもっと研究していかなければと思いますし、若い人たちが持っているアイディアやイマジネーション、AI、ITなどを上手に融和していきたいと考えています。

2018年11月30日に渋谷で開催される、郡山ナイト〜郡山の企業と一緒に事業をつくろう〜にて新しい事業やプロダクトの形をつくるイベントを開催します。
アイデンティティーの野地さんも参加されます。ご興味のある方はお気軽に参加ください。
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