岩手県一関で想いを込める染物のデザイナー募集!株式会社京屋染物店
こちらの募集は終了いたしました。
岩手県一関市。
豊かな自然に囲まれたこの土地に、創業100周年を迎える京屋染物店という企業があります。
一般に、染めや縫製は部門別に扱われることが多いなか、京屋染物店ではデザイン、染め、縫製のすべてを一貫して行なっています。
このような染工場は全国でも数少なく、日本国内だけではなく、海外からも高い評価を得ているそうです。
大正時代には10,000社以上もあった染物事業も、現在ではわずか300社ほどですが、このような時代背景のなかで、京屋染物店は創業以来最高の売上を達成しました。
また、伝統工芸産業では珍しく、社員の平均年齢は30代。若い人の活躍が目立っています。
そんな京屋染物店では現在、半纏や浴衣、手拭いなどを担当するデザイナーを募集しています。
京屋染物店の外観、隣には日本庭園があります。
若い人々を惹きつける京屋染物店の魅力はどんなところにあるのでしょうか。
今回は、専務取締役の蜂谷淳平さんにお話をお伺いすることができました。
先代よりもより良いもの、より良いサービスを提供するという蜂谷さんの言葉はとても力強く、強い想いを感じました。
誰のためにが現場でも感じるように
専務取締役の蜂谷淳平さん
「現在のものづくり産業は分業が主流になっていて、制作物がお客様の手元に届くまで一貫して寄り添うということができません。そのため、自分が作ったものがどんな形になって、誰に喜ばれているのかをイメージしづらい。京屋染物店は、お客様と直接やり取りをして、お問い合わせから制作までの全行程を一貫して行っています。その過程でお客様の喜びに直接触れられるので、やりがいを感じられるのだと思います」。
自分が作ったものがどういう形になり、誰を喜ばしているのかということが見えないと、何のために仕事をしているのか分からず、仕事の喜びを感じにくいのかもしれません。
京屋染物店の自社一貫生産の仕組みは「誰のために」「何のために」ということが実感できるのです。
また、この自社一貫生産の仕組みは、社内管理システムにも反映されています。
「残すべきモノ」に焦点をあてるための効率化
kintone(キントーン)というサービスをご存知でしょうか?
kintoneとはサイボウズ社が提供する業務管理サービスで、社内管理、案件別管理、社内日報など、会社毎に自由なカスタマイズができます。
2017年、サイボウズ社が最も素晴らしい活用方法の企業を表彰する「kintone AWARD」で、京屋染物店はグランプリを受賞しました。
工房前にかかっていた暖簾
ITツールと伝統工芸。
一見この二つは結びつかないように見えますが、蜂谷さんは、新しいITツールを積極的に取り入れていくことで、無駄を減らし、より有意義な時間の使い方ができるようになると言います。
「伝統工芸を扱っている会社の多くはITツールを敬遠しがちです。しかし、ネットワークが普及した現在では、ITツールを使うことで無駄な仕事はもっと減らせると思っています。そういった無駄な仕事をガンガン減らしていけば、その分早く家に帰って家族との時間に使ったり、お客様との対応の時間に使ったり、また、ものづくりのクリエイティブの時間に使うことができます。ITツールを上手く利用することで、本来残すべきものにしっかりフォーカスして仕事を進めることができるんです」。
仲間だから仕事だけではない助け合いも
一般には、会社の業務よりも個人の時間を優先することは良く思われないのが実情でしょう。
ワークライフバランスなど、会社の業務と個人の時間を両立させる考え方もありますが、京屋染物店では会社の業務と個人の時間を明確に区別しないという考え方を実践しています。
染料を塗布している様子
「例えば社員の子どもが病気になったら、それはプライベートの出来事かもしれないですけど、積極的に休みをとってもらっています。もちろんその分は他の社員がしっかりバックアップして対応します。これは社員が幸せになることが会社の幸せになるという考え方に基づいた風土ですね。ここに魅力を感じて働きたいという方も多いですね」。
社内管理システムも『助け合う』ということをベースに作られているのだそうです。
例えば、ボトルネックに集中しがちな各部署の業務量などを見える化することは、受注からデザイン、染め、裁縫までワンストップで行うために必要な効率化であると同時に、社内全体で『助け合う』という姿勢の表れでもあります。
この『助け合う』という姿勢は、会社のあらゆる制度に反映しているのです。
祭りで地域を1つに
2010年、現代表の蜂谷悠介さんが4代目に就任しました。
それ以降、京屋染物店は社内のシステムも商品に対する考え方も大きく変わったそうです。
そこにはどのようなきっかけがあったのでしょうか。
職人さんたちが半纏を一つ一つ、丁寧に縫っています
「会社や仕事に対する考えが大きく変わったのは東北の震災のタイミングですね。震災のタイミングで日本の祭りがなくなるなと思いました。世間的にも祭りどころじゃないと。ですが、震災から一年経ったくらいで、沿岸の方から震災でボロボロになった半纏が届いたんですよ。半纏がなければ祭りができないから修復してほしい、というご依頼でした。それには本当にびっくりしました。
その時思ったのは、ピンチの時ほど祭りで日本を盛り上げられる、ということでした。祭りで気持ちを一つにして、その地域を盛り上げていくことができる。また、祭りがあることで仮設住宅などで暮らしているような、コミュニティがバラバラになってしまった方々も、それを繋ぐ役割を果たすことができる。その印が半纏なんです。私たちがやっている仕事は、ただ半纏を収めているというのではなくて、半纏を通してコミュニティを作っていったり、それぞれの思いに寄り添って、生活に彩りを与えていったりすることなんです。染物業は、暮らしや人の想いを形にしているという、嬉しさや喜びのある仕事だと感じるようになったんです。震災はそのきっかけになりました」。
震災で祭りの意味を再認識した蜂谷さん。
離れ離れになったコミュニティを祭りと半纏によって取り戻すことができるという実感は、
京屋染物店だからこそ感じることができたのかもしれません。
半纏は想いを背負って着るもの
現在では染物もデジタル技術による制作が主流になり、より低価格で作られるようになっているそうです。
しかし、京屋染物店による手染めとデジタル制作を比較すると、重厚感や色の深みが違います。
デジタル制作で画一的なデザインを作ることはできるようになっても、人の手によって表現される面白みや深みなどは乗らないようなのです。
「そういう商品はそれでいいと思います。それも進化していった染めの技術がもたらした価値ですから。ただ、半纏というのは、誰に作ってもらったのかとか、こういう想いで頼んだんだとか、すごく人の想いが乗っているものなんです。その想いをかたちにすることが仕事なので、すごく緊張感のある仕事をさせてもらっていると思います。その想いをかたちにする作業がこの仕事の楽しいところですね」。
京屋染物店さんの半纏。背中に1本筋が通っています。
商品ができあがるまで
京屋染物店は、提案から商品ができあがりまで、お客様の想いやこだわりを実現できる体制をとっています。
実際にはどのような流れで商品ができあがって行くのでしょうか。
染めた直後の布が、所狭しと吊るされている
お客様から実際に問い合わせを受けたら、お見積もりを提出します。
見積もりが通り、受注が確定したらデザインを制作して行きます。
その後イラストレーターでデザインを作り、その型となるデータを現場で型彫し、染めに入るという流れになります。
染めのあとは、熟練の職人が商品に仕立てます。
縫製の流れは、パターン作成から裁断、そして縫製が終われば仕立てに入ります。
縫製は、細かい部分までこだわります。縫い目は見せず、縫いの間隔は強度と美しさを考えて作られています。
このような小さな沢山のこだわりによって、商品を使うほどに品質の違いが明らかになると言います。
京屋染物店が求めるヒト
お客様の想いをかたちにする。
染物や半纏を通して、その想いが代々引き継がれていく。
京屋染物店の仕事をするためにはどんな資質が必要なのでしょうか。
蜂谷さんにどういった人に来て欲しいかを尋ねてみました。
「まず、コミュニケーションがとれる人、しっかり受け答えができる人ですね。そこは最近特に見ています。うちの仕事はお客さんとしっかりやりとりをしないと仕事にならないんですね。あとは社内でしっかりコミュニケーションがとれるかどうか。ただデザイナーとして絵が上手い!というだけではなくて、コミュニケーションがしっかりとれるかどうかを重要視しています」。
デザイナーはどういう意図でデザインをしているのか、しっかりとお客さんに伝える必要があります。京屋染物店のデザインには、柄の一つ一つにも意味がある。そのことをきちんと伝達できるかどうか。お客様の要望を聞き、それをデザインに落とし込んだ上でしっかりと伝えていくには、コミュニケーションの力が重要なのです。
「例えば“麻の葉柄”という柄があります。麻の葉というのは成長が早く、まっすぐ伸びる。この柄には子供の成長を願うという意図が込められています。他にも“七宝柄”というのは、円が繋がった柄なんですが、これはご縁の繋がりを意味していて、ご縁は七宝よりも価値があるという意味でもあるんです。このように、柄の一つ一つに意味があり、お客様の想いがあるということを意識して制作する必要があります。あと最低限ではありますが、イラストレーターのスキルが欲しいですね。最終的にはイラストレーターでデータを起こして、それが形データになって、現場でその形を掘って染めたい。もちろんパス取りなどのスキルがあれば歓迎致します」。
このようにこだわりを持って作られた商品でも、納品のタイミングでは本当の完成にはならないのだと蜂谷さんは言います。
「例えば半纏を一着作るとき、本当に長く使える良いものを作ります。半纏は着れば着るほど色褪せてきて、使うほど歴史が刻まれて行きます。苦楽を共にする半纏は、先祖から代々引き継がれて行くんです。弊社が納品したときに完成するのではなくて、代々着続けたその先に完成品があります。半纏は決して新しければ良いと言うわけではないんです。歴史や想いがその半纏に載っているかどうかに価値があるんです」。
また、京屋染物店はオーダーによる生産だけではなく、直しの依頼も多数あるという。
利益につながりやすいとは言えない直しの依頼も決して無下にはしない。
ものの歴史やそこにある想いを大切にする京屋染物店だからこそ、そういったお客様の想いを大事にできるのです。
決裁権は全社員にある
「弊社は、全社員に決裁権を持たせています。ですので、この依頼は受ける受けないといった意思決定は、それぞれの社員が自由に行うことができます」。
一般的な会社の場合、受発注に関しての意思決定はトップが行い、現場はそれに従うことが多い。ところが京屋染物店はその逆で、現場に全ての権限を持たせているのです。
「もちろん全ての権限を持たせているからといって、なんとなく決めてるわけではないですよ。会社の運営や経営に関しての勉強会を定期的に開いて、そこで会社がいくらでものを仕入れて、いくらで売れば利益が出るか、会社がどういう風に流れていけば良いかという経営の感覚を身に付けられるようにしています。そういうことをした上で、社員全員に決裁権を持たせるボトムアップ体制をとっているんです」。
京屋染物店では会社の財務体系なども勉強したり、会社経営の5年分を2日で行うマネジメントゲームを社員間で行なったりもしているとのこと。こういった勉強会を繰り返すなかで、社員が経営に関する知識を深めて行くからこそ、社員全員に決裁権を持たせることが可能になっているのです。
いずれは社員が自分の給与を決めることができるように
デザインや染めといった技術面だけではなく、会社の財務体系やマネジメントの勉強をすることで、将来的には自分の給料を自分で決める仕組みを作ることも可能だと蜂谷さんは言います。
「社員の中にはお金よりも時間が大切だという方もいますし、逆にお金をすごく必要とする方もいます。もちろんタイミングによって要望は変わるものですが、そういう希望がある上で、どうすればそれができるのかを社員が自ら考えて、提案する風土を会社の体制に組み入れる。そうすることで、それぞれの社員にとってベストなチーム体制を作ることができると思っています」。
自分たちで考えて、自分たちで決める。
そして、自分たちで決めたことでお客様を喜ばせる。
京屋染物店には、必要十分な知識と経験を与えられる環境があります。
「こういう体制は簡単ではありません。社員が自分で考えないといけないので。ただ、その分面白いですよ」。
デザイナーとして必要なこと
デザイナーとして活躍するためには、染めや縫製の技術に関する知識も重要になります。
様々な柄の持つ意味を知り、お客様が込めた想いを形にしていく。
布ではなく、半纏など実際に着るところまでを想像してデザインするということです。
デザインは裁断や縫製を考えて上で、デザインをしていく
「今回はデザイナーとして募集をしていますが、ゆくゆくはマルチに色々な部署の業務を行う可能性もあります。自分の業務だけ完璧に行えても、会社全体が良くならないと難しいですよね。私たちは同じ船に乗るチームとしてやっているので、弱いところは仲間と助け合い、みんなで会社を動かして行く必要があるんです」。
社員それぞれの幸せが実現できた先に会社としての幸せがある
色鮮やかな半纏、先代が淳平さんの結婚祝いに染めたもの
「弊社は、それぞれが自分の幸せについて考えているかどうかも採用の判断基準にしています。会社のことだけを考えていたら、プライベートで家族との時間が持てなかったり、趣味に時間を使えなかったりします。そうすると個人の幸せが満たされません。個人の幸せがあるから、その先に会社の幸せがある。個人と会社の双方が合わさることでどちらもより良くなり、幸せになれるという関係性を作れるかどうか。このことを採用の大切な判断基準にしています」。
個人の幸せについて考えることは会社に入ると二の次になってしまうイメージが強い。
しかし、京屋染物店で働く上ではまずそれを考えるべきだと蜂谷さんは言います。
「会社に入るとすごく言い辛かったりするじゃないですか。個人の幸せって。でもそれがあったほうが良いと思っています。自分が幸せになるために会社に入るのですから」。
一関の企業として地域を盛り上げる
京屋染物屋は地元一関市との取り組みも盛んで、一関市の夏祭りや行事、ほかにも小学生を対象にした職場体験教室も行っています。
蜂谷さん個人も、ものづくりのブランディングを行う伝統工芸協議会を主催したり、地域の企業と一緒に、地域全体を良くするための様々な活動を行なっています。
「PRなどは昔からそれぞれの会社がバラバラでやっていて、地域でしのぎを削り合うようなことがとても多かったですね。でもそれでは何も良くならないので、地域で連携して、地域全体のブランディングやPRをしていこうと活動しています。」
うちでしか出来ない仕事に集中する
京屋染物屋は今期過去最高益を出しました。
けれども従業員は残業をせず、午後五時頃には帰宅しているそうです。
有給は社員もパートも平等に取っている。
いったいどのようにして業績を伸ばしたのでしょうか。
「一番大きい要因はうちがするべき仕事にきちんとフォーカスしたこと。利益が出ていない時は色々やらないと不安で、うちじゃなくてもできる仕事をたくさんやっていました。スポーツ関係のタオルだったり、美術関係だったり。今はそういった仕事はほとんど受けていません。その方がうちじゃないといけないお客様だけが来て、うちもお客様に対して全力で向き合えるんです」。
今後どういう組織にしていきたいか
「うちはトップダウンではなく、指示ゼロなんです。それをもっと加速させていきたい。そのためにもっと個人の能力やスキルを高めなくちゃいけないと考えています。それぞれが自発的に話し合って、意思決定をポンとできるような組織にしたいですね」。
自分自身を高めていくことで、お客さんに喜んでもらえるようになる。
給与、時間、仕事の内容もより良くなっていく。
そのことに仕事の面白さを感じられるような、そういう組織にどんどんしていきたい。
環境などもこちらでどんどん提供し、好循環を出していきたい。
蜂谷さんはそう言います。
京屋染物店ではデザイナーを募集中!
京屋染物店では、デザイナーの募集をしていますが、デザイン業務だけを行うわけではありません。設計を行うためにも染物や裁縫がどのように出来上がっているか学び、理解をする必要があります。
そのため、デザインが好き!という方だけではなく、伝統工芸品や文化が好きなデザイナーの方であればよりオススメできると思いました。
京屋染物店は今後、染物業以外の他業種にも積極的に事業展開していきたいと考えているようです。
日本から伝統文化を世界に発信したい、祭りのコミュニティを通して新しい価値を提供したい、などなど、日々の業務とは別に新しい挑戦をしたいという方も積極的に募集しています。
応募に関して
募集内容
組織名
株式会社 京屋染物店
募集職種
デザイナー
業務内容
半纏、浴衣、手拭いなどのデザイン製作と提案、型データ製作など
雇用形態
正社員、アルバイト、外部デザイナー契約(在宅勤務)のいずれか
勤務地
岩手県一関市大手町7−28
給与
◇正社員:月給150,000〜(スキル、経験により相談)その他手当、福利厚生あり
◇アルバイト:日給5,600〜
◇外部デザイナー契約:1案件毎報酬(内容により異なる)
勤務時間
正社員:8:00~17:00、1日8時間
アルバイト:9:00~17:00、1日7時間
休日
週二回(季節により変動)
基本土日休み、その他業務カレンダーによる
応募条件
特になし
選考方法
書類審査→SkypeまたはGoogleハングアウト面接→採用
その他
正社員登用あり
申し込みフォーム
今回の募集は終了いたしました。次の機会をお待ちください。